「友達なのかい?」
「なんか、“こんな子いたな…”ってくらいには思い出すんだけど、ぶっちゃけ誰だか分かんない」
「“分かんない”って」
「そもそも、あたしが東京で一人暮らししてるのも知らなくて実家に送ってくるくらいだから、全然親しい友達じゃないんだよ」
「そうだねぇ」
「…ってゆーか、親しくないあたしにまで“あたしたち、こんなに幸せなんです♪”って知らしめたいワケ? バカじゃないの!」
「うれしくて仕方ないんだよ、きっと」
「あたしが“よかったね、おめでとう、お幸せに♪”なんて言うと思ってんのかな。こっちは不幸街道(ふこうかいどう)おんな一人旅だ、ってぇーの」
「“不幸街道”って…。そういや、こないだ面接を受けた“マックなんとか”ってところから返事はきたのかい?」
「“マックなんとか”じゃないって。システムマックス!あたしゃ、ハンバーガーもポテトも売る気はないよ」
「あんたねぇ、無愛想でくちベタのクセして、たまにクチ開くと憎まれグチしかたたかない。それじゃあ、接客業は務まんないよ」
「だって母さんが“笑い方”を教えてくれなかったから」


