恋華(れんげ)


あたしンちは地元の商店街で“池田薬局”っていう小さな薬局をやっている。

「蓮華ーっ、手紙が来てるよーっ」

1階のお店のほうから母さんの声が聞こえる。

「………」

だけど、あたしは2階のパソコンで求人情報に見入ってた。

「…ったく、もう…。ちょっとはお店の手伝いでもしたらぁ……」

…などとブツブツ言いながら、母さんが階段を上がってくる。

「はい、あんた宛ての手紙だよ」

「ありがとう」

ほとんどが美容関連のダイレクトメールだったけど、その中に一通“見たくもないハガキ”が混じってた。

「ハァ…」

「なんだよ、ため息なんかついてさ」

「母さん、こんなのわざわざ持ってきてくれなくていいって」

「え?」

「結婚しましたとさ。めでたし、めでたし」

ハガキには仲良く並んだカップルの写真が印刷されていた。