恋華(れんげ)


あたしは黙ってメガネ男に用紙を渡した。

「お疲れ様でした。以上で筆記試験は終わりです。もう、お帰りになってかまいません」

「ありがとうございました。失礼します」

あたしは一礼して“株式会社システムマックス”を後にすると、急いでタバコの吸える場所を探した。

タバコの禁断症状が出そうだったからだ。


昔なら歩きタバコもできたんだけど、今は条例で無理なおハナシ。

しばらく探し回って、ようやく駅の喫煙室にたどり着くことができた。



結局、最後はいつもこれだ。

「またダメだろうな……」

とつぶやいて「ふぅ」とタバコの煙を吐く。


でも、もし万が一、採用されたとしても、あんな会社には行きたくなかったし、
「コッチのほうからお断り」だと思った――



その面接以降は当分、面接の予定もなかったし、あたしは、それから数日後、久しぶりに実家で羽根を伸ばすことにした。