「でも堕ろすんだろ? 女手ひとつでなんて、そうそう育てられるもんじゃないぞ」
「“女手ひとつで育てる”って……課長は産まれてくる赤ちゃんのお父さんにはなってくれないんですか?」
「し、しかし私には妻も子どももいて……そんなこと、キミだって最初から分かってたはずじゃないか!」
そこにはあたしに対する配慮なんて微塵も感じられなかった……。
その瞬間、サァーッと波が引いていくように、秋吉への気持ちも引いてしまった。
そして22本の薔薇の花束を使って、あたしにかけた秋吉の魔法がフッと解けた―――
あたしは泣きそうになった。
けど次の瞬間…、
「ハッハッハッ! 超ウケるぅ♪」
パンパンと手を叩いて大笑いした。
「ど、どうしたんだ……?」
秋吉には、あたしが笑う理由が分からなかったんだと思う。


