恋華(れんげ)



「それにしても、まいったな……」

「え?」

「指が無事だったのはいいけど、アコギが完全にイカれちまった……」

「そっか…」

「もうこれじゃ、ライブもできねぇ……」

「………」

「さしずめ今の俺は“カタナを失ったサムライ”ってところか。フッ」

無理に笑ってみせようとするのが、あたしには逆に痛々しかった。

「………」

「新しいのを買おうにもカネねぇしな……」

「………」


貴志にはあたししか頼る人間がいないんだ…。

路上ライブができなくなったら、メジャーデビューの夢だってダメになっちゃう……。

やっぱ、あたしが貴志の面倒を見てあげるしかないんだ……。

あたしは貴志のことを“捨て猫”なんかには絶対にしない!