【短】花火、夏の恋。

「え?菊地くん…?」


「俺どうしても花火見たいし!北川もそうなんだろ?」


ニッて少し子供っぽく笑うから、つられてあたしも頷いた。


「じゃ、決まり!つか、腹減らね?何か食お!」


ちょっとだけ強引な菊地くん。

でもそんな明るい笑顔が、あたしの背中を押してくれる。


「……うんっ」


きっと今日、一生分の幸運を使い果たすのだろう。


それでも全然構わない。

今夜だけでも、菊地くんの隣にいられるなら…。


3年間同じクラスで、ずっとずっと見てきた。

今までズルズル諦められなかったけど、この想いは今日で最後にしよう。


きっと神様もそのきっかけをくれたんだ。


だから、だから……

最後ぐらい素敵な思い出作りたいな。