【短】花火、夏の恋。

え?

そんなの…嫌だ。


せっかくできたきっかけ。

一緒にいられる最初で最後の今を、誰かに取られるなんて嫌。


そう思ったら胸がキューッてなって、勝手に声が溢れた。


「ダメ!今日これなかった皆の分まで、あたし達が楽しまなきゃいけないから」


「は?美波何言ってんの?」


すかさずきた莉里ちゃんの鋭いツッコミで、ハッと我に返ったあたし。


ヤバい…!

自己中で大人気ないにも程がある!


「い、いや…あのっ」


言い訳しようとテンパってたら、右手に温かさを感じた。


「莉里悪い。今日だけはお前のわがまま聞いてらんねーわ」


それだけ言い残して、あたしの右手を引いて走り出した菊地くん。


頭が真っ白のあたしに理解できたのは、心地いい夏の風だけ…。