仮縫いコーデ


「派手じゃなきゃ省かれる、恥は捨てろ!」


人混みの中、注目を浴びるも構わない。

お祭り騒ぎで許される。
だって今日はそういう日なんだからへいっちゃらだ。



「かーわいーい!」
「お二人さん似合ーい」
「写メ撮らせろ」
「ちょ、自分ら正気?!」
「バカップル殺すぞ」
「ウケる! 皆見てよ!」
同級生が激走中の俺たちの格好に驚きつつ、ヤジをいれる。


目立ってナンボだ。
そのために頑張ったんだ。




今は解体作業時間で文化祭はとっくに終わってる。

にも関わらず、劇でもないのに女がウェディングドレス着ちゃってて、

男が真っ白タキシード着ちゃってて、いかれたコスプレ二人組が校内を走りまくってんだ。

イジられて当然だ。


でも、隣を必死で走る彼女の笑顔を見れるなら幸せじゃないか。



あの人がどこに居るか知らないか、そう尋ねる手間も不要らしい。

「さっき靴箱んとこに居たぞー!」

学生テンションでB組の野郎が知らせてくれた。


そうと分かればもっと走ろう。
ダッシュで行く。



ところがどっこいデマ情報、
靴箱付近に目的人物が居やしない。


そうなりゃ気分をきりかえ、一階から二階へ、二階から三階へ、二校舎が違うなら渡り廊下で一校舎へ、

三階から二階へ、二階から一階へ、一校舎が違うなら靴箱スルーで運動場へ、

体育館へ、走る走る。

入れ違いになったかもだし、もう一度三校舎からやり直す。



喧しい靴音は高校生そのものだ。


「まだ恥ずかしい? 慣れたら平気くない?」
「ふ、開き直ったら楽しいかも!」



キラキラした世界、
今日は文化祭、
俺たちに一番優しい日だ。