断れないと分かった上で念を押す俺はSなのかなんなのか。

まあ、こんな彼氏に惚れた方の自己責任だと片付けよう。



冷たい手首の細さとか、ワッフル屋さんみたいな美味しそうな香りとか、

みずみずしい長い髪とか、CG加工済み並の輝く肌とか、

男心をくすぐる潤んだ瞳とか、華奢さが際立つ鎖骨とか、

目の前に居る恋人の可愛さが、薄暗い密室で発動されたらお年頃の彼氏は困っちゃう。




「……すきだ」

唇から零れた台詞は意外にも糖度高く、純愛ロマンチストっぽくて笑えた。



「うん、」

彼女の返事はもっともで、
状況が状況なだけに勘違いしそうになるが、そういうんじゃない。



今日の目的はただ一つ。




「ほんじゃあ行きましょうか!」


今の俺が思う限りで大好きな子、
ずっと一緒に居たい子、
花嫁にしたい子、
穏やかな老後を過ごしたい子、


ううん、
デートの終わりにプリクラを撮りたい子、
体育でイイカッコしぃな瞬間を見せたい子、
掃除の時間にホウキで背中をどつきたい子、

そんな彼女と手を繋ぎ、更衣室から廊下へと飛び出した。


あの人に会いにいこう。