なぜって、とりあえず黒髪だし、でもちょっとだけ寝癖っぽくふにゃりとパーマあててるし、

細身だし、手の筋とかそこそこ綺麗だし、薄いピンクとグレーのあざといコーディネートがこれまたよく似合うし、

勉強は頑張るし、真面目だけに偏らないようぼちぼちユニークだし、ナルシストの癖に自虐ギャグを心得てるし、

何より半端丈チノパンを着こなせちゃう系のフェミニスト男子だからだ。


となれば、
自慢じゃないが、女子の妄想の条件は素で満たせてるらしい。





高一のホワイトデーから交際スタート、早一年と九ヶ月程、

今や高三の秋、本日はビッグ青春イベント文化祭だ。



アタシ可愛い自慢の派手グループが変装したがるお化け屋敷に、

作業が進むにつれ力尽き最初と二番目の仕掛け以降どんどんやっつけ仕事になっちゃった暗闇迷路、

お調子者の男子メンバーがメイド女装を引き受ける喫茶店に、

誰も本気で見に来ないし当日は自分たちも遊びたい感剥き出しの無人展示教室、

会場と温度差が生じがちだと心得た上での懸命な捨て身演劇に、

身内ノリで突き進み、ただひたすら楽しそうなクラスメートの模様が伝わるグダグダ内容のビデオ上映会、

全校生徒が一つ塗ったタイルのモザイクアートに、

他校生との出会いを求め、メイク直しに髪いじりでごった返す各階のトイレ、

どこもかしこもお祭り騒ぎ、皆が勝手に喜んでる。



そして、もちろん俺も――