仮縫いコーデ


卒業アルバムに残る。
皆の記憶に残る。

ずっと一緒に居たい。
付き合う理由もないけど、別れる理由もない。

未来を繋ぐ為に痛いことをした。


これは幸せだ。

好きな子に自分が作ったウエディングドレスを着せ、皆に注目される中、写真に残せたんだ。


「おめでとー」
「自分らどんだけ暇なの」
「夫妻誕生ー」
「ラブラブきもーい」
「かわいー後で着せて」
「見せつけんなって」
「羨ましいぞー」

校舎から覗く先生、生徒たちによる祝福は、将来の祝電だ。


幸せだろう?
この痛さが最強だ。




数年後、自分の子供に見せたいんだ。
お父さんとお母さんは皆と青春を楽しんだのだと自慢したいんだ。

故意に馬鹿になる楽しさを教えたい。


彼女とならお伽話を実現できると信じたい。


それが三流な愛だ。






「誓いのキスは?」


カメラマンが言う。



らしくない。
文化祭テンションに操られて――やってしまった。


天上から降ってくる皆のキスコールに躍らされ、甘い唇にそっと重ねる場面で、


「はあ?! こんな奴とキスなんかするかよ!!」

小学生ばりに動揺しちゃった俺は、


「、ったー!!?」


ここぞって時に、愛しの妻を地面に落っことしてしまっていた。