カメラマンの表情から、まるで結婚式のような一枚なんだろう。
ウェディングドレス姿の彼女とドヤ顔の彼氏、
こんな写真別れたら汚点になる?
未来の妻が悲しむ?
いいや、別れないから大丈夫だ。
未来の妻はこの腕の中にいるから平気だ。
――ほら、この程度の愛を貫く。
『卒業しても皆ずっと仲間!』
そう描かれたプラカードが、アーチの真ん中にかかってる。
美術部と園芸部のコラボ作品の前なら、俺たち二人は演劇部の役者だとごまかせるはずだ。
となれば、アツイ友情の一枚は、保守的な親世代からウケばっちりで、
この写真をアルバムから外すことはしないだろう。
むしろ、若いだけの二人に青春を重ね大きく伸ばして載せてくれるだろう。
ずっと考えていた。
アホな夢を四ヶ月前から抱いていた。
服飾専攻の名誉にかけ、ウエディングドレスを作った。
白タキシードは時間がなくて少々雑だがドンマイだ。
そして、花嫁がローファーで花婿がスニーカーな点はうっかりミスだがご愛嬌だ。
きっと、更衣室の棚の上、さっきまで着てた制服の横に靴の入った紙袋が忘れ去られてる。
「カメラマンさん! 一生感謝します!」
フラッシュの残りで、ちょっと目が霞む。
無垢な光の中に居た。
十八歳少年、十七歳少女、確かに優しい光に包まれてた。



