『あんな風に学生時代恋愛したかったな』

『制服デート憧れるよね、今更戻れないもん』


放課後、俺と彼女が遊ぶ姿をチラ見する大人どもに噂される付き合い方をしたかった。


ちょっとバカバカしいが、『俺らの爽やかな恋が羨ましいか?!』って、

心の中でだけ他人に威張れるレベルへ達したかった。


だから、浮気バレで修羅場り別れ、壁を乗り越えて〜の仲直り劇とか、
身体だけの関係から真実の愛を知りめでたくカップル成立プロジェクトとか、

そんなオシャレな真似はしない。
そういうドラマチックな展開は望まない。




そう、俺が目指すのはあくまでダサさだ。

愛してるなんてイケメンに囁けない。



たとえば先週の話だが、

『電車に傘忘れた、最悪この世の終わりだ』と、俺が言えば、

『うっわ、愚痴る前に自己管理しなよ』と、友達ノリで彼女がふざけるんだけど、

あの時だって自分なりに愛を告げたつもりだ。


『いやいやお前のメールに神経集中してたんだよ、傘の存在忘れてたんだ』

ほら、結構ガッツリ口説いてた。



とはいえ、『はいコンビニで500円傘無駄に買う運命〜』って流されたけど、

まあ、そんなクオリティーの低い会話で笑っては、幼く好きを増やしてく感じが大切に思えてならない。



それでもいつか、夢を見る。


恋とは、『彼氏に絶対スッピン見せたくない』って彼女に恥じらってもらえることで、

愛とは、『彼氏にだけスッピン見せたいな』って彼女に照れてもらえること、

そう信じたくなる俺は高校三年生、世間でいう男子力高い男子だ。