洞窟の中は通路がいくつも枝分かれしていて、分岐の壁にはエルフの文字でどこに向かう道なのかが示されている。

 通路は全てがつながっているという訳ではなく、各々の家族ごとに区切られており、長い年月のいたずらで壁が崩され、そこにドアが作られることもある。

 基本的に物は少なく、どの家庭もすっきりとしている。

 長年、住み続けているにも関わらず、生活感はあまり感じられず汚れもほとんどなく綺麗である。

 二人が進んでいった突き当たりの部屋には、老齢の男性が優雅に腰を落ち着けていた。

 冷たい床に厚手のマットが敷かれていて、幾つも灯されているロウソクが室内を明るく照らしている。

 思っていたほどの肌寒さはなく、丁度良い室温となっている。

 艶やかなベージュの長い髭(ひげ)と髪を流し、ゆったりとした服を着こなして上品にシレアたちを交互に眺める。

 彼らの長老だろうか、その姿には威厳と尊大さが見て取れた。