「降り出した。止むまでここで足止めじゃな」

 シレアはユラウスの言葉に森の中を見回し、さして密集もしていない木々の根元に腰を落ち着ける。

 草原のエルフの集落まではすぐそこだ。

 慌てる事もないだろうと、二人は朽ち木を拾い集めて火を灯した。

 ──静かな森にパチパチとたき火の音が響く。

 雨の音は木々の葉に、地に当たり、心地よくシレアの耳をくすぐる。

 ふと、そんな自然の音色の中に何かを感じて腰の剣に手を添えた。

「ぬ?」
 ユラウスは彼の険しい表情に気がつき周りを警戒する。

 森特有の空気の中に漂うかすかな気配を見落とさぬように、シレアは微動だにせず柄を持つ手に力を込めた。

 突如、真上から何かが勢いよく飛び降りてきたかと思うと、一気に周りを囲まれる。

 立ち上がった時にはすでに、剣の切っ先が幾つも二人に突きつけられていた。