「あ、待て」

 さして起伏のない声で呼び止めたところで従う訳がなく、あっという間に人混みに紛れて姿が見えなくなった。

 顔を覚えはしたものの、追いかけるのも面倒だとカルクカンの首をさすって手綱を握り、再び宿を探し始める。

 すると──

「ちょっと! なんで追いかけてこないのよ!」

「そうよ! 追いかけてこないのよ!」

 悪びれることもなく戻ってきた双子を無言で見下ろす。

「追いかけてほしかったのか」

「当り前でしょ!」

 赤いリボンの少女は威勢良く答えた。

 わざわざ追いかけさせるためにやったのだとすれば申し訳なかった──とは思わない。

 なんの理由があってそんなことをしたのかと二人をじっと見つめる。

 遊んでほしかったのだろうか。

 いや、それならば同年代に声をかければいいことだ。

 よりにもよって、どうして大人のましてや旅人に頼む必要がある。