「種の存続が脅かされる危機感すらも、長きにわたる命によって失われていた」

 暗雲の時代を生き延びた先には誰一人、仲間はいなくなっていた。

 この世の理(ことわり)のうえに淘汰される種であったのかもしれない。

「古いものが、いつまでもしがみつくものではない」

 それでも、種としての悪あがきくらいはあって然るべきだったのではないだろうか。

 なんともあっけなく世界から去ってしまったものだ。

「千年ほど前には、仲間を探す旅に出た事もあった」

 だけれども、それは己の孤独を確かめるだけに過ぎなかった。

 どうして己だけが生きている。

 何故死ねなかったのか悔やまれてならない。

「わかっておるよ。我らは淘汰を受け入れていた」

 悪あがきなど到底、考えられなかっただろう。

 生き残った者だからこそ、今はそう思える。

「そうか」

 ユラウスの言葉を耳に、シレアは遠方を眺めた。