「子ども?」

 苦しい生活からスリに手を出す子どもは今までもよく見たが今回のスリは少々、違っていることにシレアは眉を寄せた。

「なんの真似だ」

 とりあえず理由を聞く体勢に入ったシレアの革袋に別の手が伸びる。

「いただ──きっ!?」

「うん?」

 スリの集団だったかと、もう一つの手の主に視線を移したシレアは切れ長の瞳を丸くした。

「双子か」

 同じ顔にそう納得し、どうしたものかと思案する。

 可愛い少女に「両手に花だ」なとど考えるほど、シレアはユニークな人間でもない。

 ただただ「面倒だ」と眉間のしわを深く刻んだ。

「ち──」

「ん?」

「ちかんよー! キャー!」

 突然のことに思わず手を離してしまった。

 こういう逃げ方もあるということをすっかり忘れていたと不覚を取った自分に自戒の念を込め、少女たちの背中を見やる。