表皮は硬く、そう易々(やすやす)と切り裂けはしなかったが、その刃を魔法により熱くしていたことで獣は怯(ひる)み、焦げた体毛から異臭が漂う。

 ユラウスはシレアを攻撃しようとする獣にファイアボールを幾つも撃ち、火を怖がる動物である証明のごとくバシラオたちも類に漏れず、さすがに耐えきれなくなったのか悔しげに唸って去っていった。

 静まりかえった森に再び鳥たちのさえずりが響き渡る。

 シレアとユラウスは獣の気配が消えたことを確認し、互いに見合って安堵の溜息を漏らした。

「説明はあるんだろうな」

 落ち着いた所で話を戻されたユラウスは未だ躊躇っているのか、シレアから視線を外して口を開こうとはしない。

 あれだけのことをしたのだから仕方がないとシレアは彼の語りを待つことにした。