バシラオの属性は邪悪(イヴィル)だ。

 他者とは決して相容れることはなく、目の前の生き物をその爪と牙で容赦なくむさぼり食らう。

 男はそんなものがどうしてここにいるんだと、未だ納得いかずに顔をしかめていた。

 シレアはそれを一瞥し、巨体を見上げて口の中で何かを唱え始める。

 それを聞いた男も続いた。

「わしの名はユラウス・マノアルス。この森の守人(もりびと)じゃ」

 名乗ったユラウスをちらりと見やり、同時に最後の詠唱を終えてバシラオに魔法を放つ。

 直後に、三頭の獣は周囲にほとばしる幾重もの稲妻に体を貫かれ醜い叫びを上げた。

 チェインライトニングが獣たちの動きを鈍らせる。

 シレアはすかさず駆け寄って剣の柄を強く握りしめて一頭をめがけて刃を走らせた。