──じきに陽が暮れる。

「さて、どうするか」

 シレアは今日の宿を探すべくカルクカンの手綱を引いて人混みをかきわけ進む。

 大きな街だけあって、通りはごった返し思うように歩けず、表情には出ていないが若干苛ついている。

 ここから目的地まで大きな街は無い。

 旅を続けるためにはしっかりと体を休め、食料やその他諸々を調達しなければならない。

 珍しいカルクカンのおかげか、その風貌にびっくりして道を開ける者もいなくはない。

 とはいえ行き交う人の多さには敵うはずもなく、それは微々たる隙間でしかない。

 こういう場所には、定番とも言えるスリが当然のように隠れている。

 ここまで歩いてくる途中にも、旅人とスリの追いかけっこを何度か見かけた。

 そんなシレアの腰にある革袋に、小さな手が伸ばされる──

「いっ!?」

 気付かれていないと思っていた手は、革袋を掴む前に持ち主の手に掴まれて驚きの声を上げた。