足下からひたひたと這い上がってくる、どす黒い意思は全てを飲み込もうとしている。

 しかしそれを知らしめる確実な証拠はなく、おぼろげな不安だけがシレアの胸を満たしていく。

 気掛かりだがどうしようもないと街を出て北に向かう。

 二日ほど経ったころ、目の前に深い森が広がった。

 枝をくねらせて生い茂る木々の隙間から様子を窺うと、それほど鬱蒼(うっそう)としてはいないようだった。

 この森には、良からぬ魔物が棲んでいると聞いたことがある。

 その姿を誰も見たことはないというが一体、どんな魔物なのか。

 シレアは流れ戦士のなかでもあまり多くない魔法戦士(ウィグシャフタ)だ。

 鉄などの金属は魔法には邪魔になる事が多く、重たい装備は詠唱の妨げにもなる。

 そのための軽装でもあり、魔法を放つにはある程度の身軽さも必要とされる。

 とはいえ、シレアの装備は軽すぎるといってもいい。