「そんなこと、考えてもみませんでした」

 いつも無理矢理お客さんを連れてきて、謝るのに大変だったけど、そのおかげでお客が一人もいない日はなかった。

 いつも何かやらかしてくれて、忙しさで泣いてる暇なんかなかった。

「そうか、あの子たち。わたしのために」

「お前は一人ではないよ」

 その瞳に吸い込まれそうになったカナンは頬を少し赤らめた。

「じゃあさ、これから四人でっていうのはどう?」

「そうそう」

 テーブルの下からニョキッと頭が二つ飛び出した。

 シレアは双子の顔を一瞥し、無言で視線を外す。

「あ、いま聞こえないふりした」

「カナンのこと嫌い?」

「ちょ、ちょっと!?」

 シレアは慌てるカナンをちらりと見やり、双子に顔を近づけた。

 はらりと肩から滑り落ちる髪に、二人は綺麗だなと目をやる。

「私は流れ戦士だ」

 ささやいてゆっくりと立ち上がり、カナンとは視線を合わせず部屋に戻るべく階段に向かった。