ヴァラオムから受け取った剣は上品な造りではあったが、このようなものはなかったはずだ。

[奴も、そなたと共に旅がしたいのだろう]

 ヴァラオムの言葉に、はめこまれた石をじっと見つめた。

「そうか」

 暖かなものを感じる宝石は、まさしくネルサの想いの結晶──素直にそう思える。

 ほんの少しの意識で、未来は変わっていたかもしれない。

 邪悪(イヴィル)ではない彼と出会い、共に旅をしていた可能性もあっただろう。

 そうであったなら、どれほど良かったか。

「やったね!」

「さすがに疲れました」

 ヤオーツェとアレサが笑顔で駆け寄り、その後ろをモルシャが追う。

「お疲れさあん」

 マノサクスが降り立ち、安堵したように明るく笑う。

「シレア! やったな」

「エンドルフ」

 互いに前腕(ぜんわん)を軽くぶつけて口の端を吊り上げる。

 そうしてシレアは周囲を見回し、抱き合って喜び合う者たちを視界全体で捉えた。