霧はみるみると膨れあがり、小さな山ほどになる。

 霧の塊に魔法の攻撃を仕掛けるも、強いエネルギーが障壁となりまったく通じない。

 悔しいが、どうすることも出来ずに立ち尽くす。

 そうして黒い霧が晴れたとき、真の敵がシレアたちを悠然と見下ろした。

「なんと巨大な──」

 アレサは呆然と眼前の存在を仰ぎ見た。

[我こそはこの世の支配者! 全ての存在は我の前にひれ伏せ! 崇めよ!]

 漆黒の翼を広げたドラゴンが、低く心の奥底を震え上がらせるような声をシャグレナの大地に響かせる。

 黒い巨体がシレアの頭上に大きな影を作り、降り注ぐ冷たい視線に一同の心には等しく絶望が漂う。

 その威容にオークやコボルドたちまでもが動きを止め、目を見開いてドラゴンを見上げた。