[自然の力全てを味方に出来たのは彼らだけである。その力の強大さは、それだけで理解できよう]

 それを知っているネルサはシレアを怖れたのだ。

[そこかしこに溢れていたマナは、もはや地中のみに流れる事となり、空を自由に闊歩(かっぽ)していたかつての強きドラゴンたちも今や成れの果て]

「それじゃあ、いくら古代竜の力を持つシレアでも無理なんじゃないの?」

 モルシャの問いかけにヴァラオムは目を眇める。

[皆がそう考えるなか、ネルサは違っていた。何故なら──]

 シレアの意志は限りなく彼らに近しい。

[全てを味方にしていた彼らに、マナの流れなど関係もないのだ]

 この世界のものは全てマナを根源としているものなのだから。

[シレア、その力を畏れるな]

 遙かな友の意思は決してそなたを黒く染めはしない。