マイナイは小さな粒が群れを成す光景を、山の中腹で眺めていた。

 異様な空気は、この距離でさえも男の眉間に深いしわを刻む。

 そのなかで、光を放つ一点を見つめた。

「私が創ったものは人ではない。美しく、穢れなき獣だ」

 それは、なにものにも囚われず、この世界を自由に歩む気高き獣──

「檻になど入れてはならない」

 あのときの幼い瞳の奥底には、言いしれぬものが宿っていた。しかれど、

「目覚めることはないと思っていた」

 そうか、目覚めたか。

 肌に伝わる、ぴりぴりとしてどこか暖かなものに口元を緩ませる。

 失敗を繰り返していた研究に嫌気が差していたマイナイは、個人で所有していた小さな骨の欠片を粉末にしてフラスコに投入した。

「世界を統べるドラゴンの復活は喜ばしい」

 マイナイは古代生物を蘇らせる研究をしていた。

 戯れに混ぜ込んだものは、彼にとっても大いなる成功をもたらした。

 人間が成したものが世界の命運を握るとは、なんと皮肉なものだと感慨深げに目を細める。