ヴァラオムもいずれはこの地を去らなければならないだろう。

 それを止められるのは強い力を持つ俺とお前だけなのだ。

「お前は唯一の正統な継承者だ。その手で復讐する権利がある」

 覚醒したいま、お前の居場所はそこにはない。

 俺のもとこそが相応しい。

「私には関係のないことだ」

「なに?」

「恨みの過去など、引きずるに値するものではない」

「なんだと?」

「お前がされたことのために、どうして今の者たちが苦しまなければならない」

 道理に合わない。そんなものに遵従(じゅんじゅう)するつもりはない。

 淡々と告げるシレアの瞳は、驚くほど穏やかだ。

 それでも、ネルサには容赦はしないという感情は見て取れる。

「目覚めたばかりの貴様が、俺に勝てるとでも思っているのか」

 低く発し剣を振り上げる。

 ふた振りの剣はぶつかり合い、激しい金属音を響かせた。

「たかだか二十数年生きたくらいで、俺に刃向かうなど──!」

 思い通りにならない怒りに銀の髪がうねる。