「それを許せとは言わない。お前が受けてきたものを考えれば、その怒りも当然かもしれない」

 淡々と口を開いたシレアを刃越しに睨みつける。

「だが、私を憎むこともまた──」

 間違いだと解っているのだろう?

「黙れ!」

 この場においても、未だ落ち着き払った帯黄緑色(たいおうりょくしょく)の瞳が憎らしい。

「ネルサ様に出会うまで、私は人として扱われず、名前すら付けられることもなかった。不出来の女と呼ばれる屈辱が解るか!?」

 怒りで体を震わせる。

「兄弟たちはネルサ様に助け出されたとき大きな傷を負い、みんな死んでしまった。わたしはそのとき誓ったのだ」

 生き延びて復讐を果たすのだと、それだけが私の生きる意味だった。

 けれどネルサ様の意志を知り、協力してくれと頼まれたとき、わたしは歓喜した。