ドラゴンには、多くの動物たちから畏敬の念を抱かれる種族がある。

 獣がシレアに供物を捧げたのもそういう事であろう。

 ネルサはシレアの中に眠るドラゴンの血を危惧したのだ。

 その血の覚醒を──

[私怨と諸共(もろとも)に、世界を黒く染めるのか。ネルサ]

 苦々しく発し、澱(よど)む空に目を眇めた。