──ユラウスは戦況の変化に辺りを見渡し、苦い表情を浮かべる。

「だめじゃな。数が足りぬ」

 エルフが参戦したことで流れは変わりはしたが、それも一時的なものだろう。

 敵はさらにモンスターを増やしている。

 ふと、隣で心配そうにしているヤオーツェに目をやる。

 いざとなれば、この子だけでも逃がしてやらねばならない。

 こんな戦いに巻き込んでいい訳がない。

 少なくとも覚悟のある我々とは違う。

 この子にそれを課すのは、あまりにも酷だ。

 そうして、どれくらいの敵を倒しただろうか。

 それでも負けじと精神を振り絞り、押し寄せる醜悪な輩に詠唱を繰り返す。

 手にしている剣は血まみれで、とうの昔に切れ味はない。

 それでもたたき切ることは出来る。

 瞬刻、ユラウスの脇を一匹のオークが横切った。

「いかん!? ヤォーツェ!」