唱えた手の中に、重さを操る魔法が練られていく。

 まさかそれを学んでいたとはとネルサは舌打ちして素早く後方に退いた。

 そうして人の頭ほど大きくなった黒い球を確認し、シレアの合図で一斉にそれを放った。

 四つの黒い球体は、まるで意思を持っているかのごとく詠唱者の意思に従いモンスターどもを次々と食いちぎるように飛び回る。

 醜く悲痛な叫びが辺りに満ちあふれるが、埋め尽くすモンスターたちを全てなぎ払うには力及ばない。

 魔法の効力が切れ黒い球が消えると、襲いかかるモンスターたちを剣でなぎ払っていく。

「いくら強力な魔法でも、こうも詠唱時間が長くては──」

「オイラには難しくて続けて出せないよ」

 上級魔法は精神力も削られる。

 経験の浅いヤオーツェには、常に緊張が続く戦場で連続で繰り出すことは困難だ。