「──っ? これは」

 詰まるような痛みに胸ぐらを掴み、女の後ろから膨らむ影に目を見開いた。

 グレイシャブルーの瞳と背に流れる鈍い銀髪を揺らすその男に見覚えはなかったが、男の視線が強くなる度にシレアの心臓は痛みを走らせる。

[あ奴は、まさか──]

「久しいな」

 男は輝くドラゴンを見やると口の端を吊り上げ、何かを含んだ笑みを浮かべた。

[やはりそうか]

「誰なんだ?」

 マノサクスはモンスターへの牽制に剣を構えつつ、苦々しいヴァラオムの声に眉を寄せた。

[とても危険な存在だ]

「言ってくれるじゃないか」

[そう言わずして、なんと言う]

 低く唸りを上げて男を鋭く睨みつけた。