くり抜かれた窓から風が吹き抜ける音は、その空間をもの悲しくさせる。

 しかし、玉座に座す影にはそれが相応しく、禍々しい闇をまとっていた。

「シレア……。どこまでも俺に逆らう」

 男は苦々しく眉を寄せ、壁に掛けられた蝋燭の炎をその目に映す。

 そんなグレイシャブルーの瞳に宿る怒りに呼応するように、荒野の暗闇から禍々しい咆哮が上がる。

 それは幾重にも折り重なり、押し寄せる波のように震えて遠くの山々にまで響き渡る。

 新月の空には薄い雲の間から星々が見え隠れして、先にある希望を根絶やしにするべく、どす黒いものが集まってくる。

 落とした瞼からはしばらく苦悩の表情を見せ、それが開かれたとき男の口元が吊り上がった。

「頃合いだな」

 静かに紡がれた声に、赤毛の女は自然と体を強ばらせる。

 そして同時に、いよいよなのかと逸(はや)る気持ちに口角を緩めた。

「こちらから迎えてやろうじゃないか」

 喉から笑みを絞り出し、のそりと立ち上がる。