次の日──広場でシレアたちが集まっていると、長老がなにやら慌てた様子で一同の元に駆けつけた。

「どうした」

「いいから来るんじゃ」

 シレアを呼びつけ、集落の西にある一軒の建物に案内すると、早朝だというのに中は薄暗く香の匂いが立ちこめていた。

 天井からぶら下がる、いくつもの飾りは何かの金属で作られているのだろうか、微かな空気の流れにも透き通った音を響かせる。

 ほどなくして進んだ廊下の先に、藍色の布が垂れ下がる入り口をくぐると広い部屋にたどり着いた。

 薄暗く強い香の薫りが満たされるなか、黒いヴェールを頭から被り大きな水晶玉を神妙に覗いている男の姿が奥にあった。

 遠詠(とおよ)みと呼ばれる者だ。