「とにかく、特には無いんじゃよ。怪しいと言われてもどうしようないわい」

「ユラウス」

 シレアに振り返る。

「驚異は確実に迫っている。我々が対抗せざるを得ない流れにあるというだけで、知らされない事が良しという訳ではないだろう」

「ユラウス殿、彼の意見は正しい」

 黙っていようとみんなで決めてはいたものの、そうすることに躊躇いがなかった訳じゃない。

 対抗出来る機会があったのに、知らされなかったことでただ荒れ狂う嵐のなかでもがくしかなくなってしまう。

 本当にそれでいいのだろうか。

 ユラウスはしばらくシレアと見合ったあと、長い溜息を吐いて彼女を見据えた。

「モルシャと申したか。これから話す事は事実じゃ。信じるかどうかは、おぬしが決めればよい」

 前置きに念を押し、ゆっくりと語り始めた──