「しかしじゃ、彼女は死んだという噂も聞く。生きていても八十歳のよぼよぼじゃろう」

「だから、引退して弟子をとってるんじゃないの」

「モルシャ!? なにしてるんだ」

「レキナ」

 モルシャと呼ばれたコルコル族は、何やら騒がしいなと様子を見に来たレキナを見ると途端に機嫌を悪くした。

「君はまた客人にご迷惑をかけているのかい?」

「どういう意味よ! 失礼ね」

「すいません。彼女は人間のシーフに憧れていまして……」

 レキナは不思議そうに見つめるユラウスたちに向き直り、申し訳なさげに口を開いた。

 それがまた気に入らないのか、モルシャは目を吊り上げて不満げに軽く牙を剥く。

「いけない? こうやって一人前になって帰ってきたのよ」

「モルシャ」

 レキナの瞳に複雑な色が見え隠れしている。

 どうやら、この二人の間には色々とあるようだ。