もとより危険なことは解っている、ここで死ぬなら私はそれまでなのだと覚悟も決めてきた。

 シレアが旅に出るという事に悲しむ女は多かった。

 そういったものにまるで関心のないシレアには、彼女たちの存在すら見えているのか謎ではある。

 例え、何があっても死ぬつもりなど毛頭無い。

 どんな出来事に遭遇しようとも絶対に諦めるものか。そんな気概で山に踏み込む。




 ──まだ中腹にもさしかからない岩山は、その牙を隠したままに旅人を受け入れる。

 草木はまばらで、これからの険しい道のりを示すように寂しげな風がシレアの頬をかすめていく。

 そうして、しばらく登った所で異様な気配が漂い始めた。

 ゆっくりと立ち止まり、どこから来るのかと辺りの気配を探る。

 シレアはふと、低くくぐもった唸り声をその耳に微かに捉えた。