古の民ただ一人の生き残りという現実から遠ざかり、この世界の危機を知ってもまだ、重たい腰は動かなかった。

 シレアと出会い、話をしているうちにどうしてだか体が軽くなったような気がした。

 何かに絡め取られていた己の心が、あたかも立ちこめていた雲が晴れていくかのように清々しさを取り戻した。

 絶望するにはまだ早い──この世界はまだこんなにも広がっているというのに、わしは何から逃げようとしていたのだろうか。

「とにかく、南には一つだけ港町があったはず」

 アレサはこの寒空に無表情で発した。