「他に聞きたいことは無いのか」

「知りたかったことは聞けた」

 あまりの素っ気なさに目を丸くするユラウスに肩をすくめ、出て行くシレアに一同は顔を見合わせた。

「さすが私のホムンクルスだ。心も強く出来ている」

「マイナイ殿、今はそのようなことは──」

「しておらんよ。する気も無ければ金も無い」

 薄笑いを浮かべて足を組む。

 そうして、互いに顔を見合わせている面々を見やり、

「君たちがどういった理由や経緯で彼と共にいるのかは知らないが、それなりの覚悟はあるのだろうね」

「どういう意味でしょうか」

 アレサは眉を寄せて聞き返した。初めて目にしたときから、アレサはこの男に妙な気配を感じていた。

 錬金術師が持つ独特の存在感とでも言うのだろうか。それは、長く生きているエルフでさえ計り知ることの出来ないものだった。

「君たちが思っている以上に、彼の背負ったものは重いという事だよ」

 怪訝な表情を浮かべたユラウスたちに男はそれ以上、語ることはなかった。