「連れていかないのか」

「ああ」

 セルナクスの問いかけにそう応え、ワイバーンを見上げて体をさする。

[グルルル]

 ワイバーンは気持ちよさそうに喉を鳴らし、頭を下げてシレアの胸にすり寄せた。

 いくら調教されているとはいえ、まるで慣れ親しんだ主人のように振る舞うワイバーンに一同は驚きの表情を見せる。

 ──二頭の馬とスワンプドラゴンを革紐で固定し、ワイバーンの鞍(くら)に接続した。

 二人のリャシュカ族が手綱(たづな)を握り、その背にシレアたちがそれぞれ乗ると翼竜は大きくはばたき、ゆっくりと舞い上がる。

 セルナクスも翼をははだかせて空へ──しばらくして、雄大な大地が眼下に広がった。

「ほほう。こいつは絶景じゃわい」

「風に気をつけろ」

 上空の風は穏やかとはいかない。突然の突風にワイバーンが煽られることがある。

 目指すウェサシスカは雲の上にあり、とうぶんは空の旅となる。

 空は近く、大地は遠い──シレアはその光景に目を細めた。