その存在感に相応しいとでも言うのか、どこか闇を思わせる風合いだ。

 そんな男の前には、無言でひざまずく三つの人影があった。

 同様に、薄暗い中では性別の判別は出来そうにない。

 男は氷河を思わせる青い瞳を眼前の一人に向け、肘をかけたままの手を軽く振る。

 その影は頭を小さく下げて立ち上がり、音もなく部屋から出て行った。

「さて、今度はどう出るか」

 嬉しそうに目を細め、背後にある外の風景にやや頭を傾ける。

 深淵に浮かぶ月は、全ての光を飲み込んで輝いていた──揺らめく珠(たま)が照らし出すのはこの世の欲望か、はたまた希望か絶望か。

 絞り出すように漏れる男の笑みは、暗闇の先に吸い込まれて消えていく。