──寒々とした荒野にそびえる岩山の中腹に、石造りの建物が粛然(しゅくぜん)と佇んでいた。

 冷たい岩を削って造られた壁に違和感を覚えるほど、その部屋には見事な玉座が窓を背にして置かれている。

 壁に灯された明かりは部屋の全てを照らすこともなく、無骨にくり抜かれた窓から滑り込む風が小さな炎を揺らしていた。

 金銀細工に宝石の散りばめられた玉座に腰をかけている男の顔は、薄暗い中ではハッキリと確認する事は出来ない。

 その男を讃えるものなのか、玉座が映えるようになのか、石畳に敷かれた毛足の長い真紅の絨毯にぼやけた影が揺らめく。

「失敗したか」

 低く、くぐもった声が薄暗い空間に響いた。

 男は、重厚な鎧をまとっている訳でもなく、かといってみすぼらしい身なりということもない。