留まるか、旅をするかを秤に掛けたとき、シレアたちと共にある自分の姿がしっくりときた。

 問題は、追い返されないかだ。

「お前ガ無事であルように」

 ケジャナルは腰に提(さ)げた短剣を差し出した。

 受け取って鞘から抜くと、よく手入れされた刃がヤオーツェを映し出す。

「ありがとう」

 もう一度二人を見上げて、もっと強くなって戻ってくると心に誓った。

「うま、もらっていくね!」

 強ばる声を張り上げて、厩舎に駆けていくその背中を二人は見つめた。

 別れは哀しいけれど、やりたいことを止めることはもっと苦しい。

「あの子には、コこは窮屈ダ」

「彼の瞳は、いつも私を通り過ぎてイた」

 願わくば良い旅路であるように──空を見上げて、ヤオーツェの無事を祈った。