「代金だ」

「え?」

 宿代は前金ですでにもらっているのにと首をかしげる。

「あれは別料金で用意していたものだろう」

「あっ」

 見抜かれていた。サービスで果物を配れるほどには宿は繁盛していない。

「いいんです。皆さんにご迷惑かけたから」

「そうか」

「あのっ!?」

「それはお前のものだ」

 それきり、シレアは振り返らずに部屋に戻っていく。

 カナンはテーブルに置かれた銅貨五枚を手に取り、感謝して握りしめた。