微かに耳に届いた話し声に足を向ける。二つの影を視界に捉えて身を潜めた。

 見やると、それはリザードマンとガビアリアンだと窺える。

 一人はヤオーツェだろう。

 では、もう一人のガビアリアンは?

「何故キた」

「だって──オイラのせいで怪我したのに、放っておけないよ!」

 ガビアリアンの声からして雌──もとい、女性のようだ。

 細い口が特徴的な種族の服装は、リザードマンよりも着飾られている。

 鱗状の肌は艶のある美しい濃い藍色をしており、その動きには女性らしさが垣間見えた。

 ヤオーツェの言葉通り、ガビアリアンは足に怪我をしているようだ。

 布を巻いているが、血は止まっていないのか赤い染みがじわりと広がっている。

「なに奴!?」

 突然現れた人間に二人は剣とナイフを構えた。