──集落から出たシレアは、少し離れた雑木林に目を向ける。

 集落の者は普段、あの林には近づかないと言っていた。

 集落を探しても見つからないとなれば、外に出たと考えた方が妥当だ。

 シレアはふと、ヤオーツェは自分に似ているなと思った。

 馴染むとか馴染めないとか、シレアにはそういった感覚ではなかったが、連れられてきた集落で自分はこの場所でどういう立場なのだろうかと戸惑いはあった。

 そもそも、それ以前に自分がどこにいたのかも、どういう暮らしをしていたのかも覚えていないのだ。

 己がいまいるこの場所に違和感を持っていたという部分は、ヤオーツェと同じだ。

 それほど密集していない木々の間を抜けていく。

 木漏れ陽が地面を照らし、葉を飾る朝露が輝いていた。