「気にしてもらわにゃ、次に活かせんだろ」

「それもそうだ」

「じゃあ気にしないで気にしながら次に活かして」

「なんだそりゃ」

 食堂は一気に和やかな雰囲気に包まれる。

「では、何か歌いましょう。これはサービスです」

 吟遊詩人は柔らかに微笑むと、繊細な装飾の施されたハープを手にした。

 白木で作られた楽器には、それに見合う美麗な彫刻がなされている。

「そいつは有り難い」

 ガタイの良い戦士はそれに口元を緩めた。

 吟遊詩人はそう多くない。滅多に出会えない彼らの歌が聴けるとあれば喜びもするだろう。

 この吟遊詩人はまだ若いながらも、その落ち着いた様子に確かな腕があると窺える。

 調律を済ませ、奏でられる美しいハープの音色が少し高めの声を引き立たせ、食堂に古(いにしえ)の伝説が紡がれていった──