「そういえば先ほどの、ヤオーツェといったか。彼はずいぶんと人語が上手いの」

「あイつは五歳まで人間に育てラれてイた」

「ほう?」

「そのせいで我らの言語を理解デキず、爪弾(つまはじ)きにされるこトもしばしばでナ」

 仲間を思い遣る感情が彼の声から見て取れる。

 いつまでもここの暮らしに馴染めないヤオーツェは一人でいる事が多く、長老も心配しているのだとか。

 とても大人しい性格で頭は良く、いつも人間の本を読んでいる。

「あイつをふぬけと言う者もイるが、文字を読めぬ我が輩にはとテも出来ぬことダ」

「いじめられたりはしておらぬのか」

「そこマではなイ。そうとなれば我が輩が全力であいつを護る所存であル」

 胸を張って発した彼に、一同は強い正義感とたくましさを感じた。