「ヤオーツェ! こんナ時間にドコに行く!」

 声に振り向くと、一人のリザードマンが見回りの兵士に呼び止められていた。

「散歩だよ」

「家に入ってイろ」

「でも」

 声からして男だろうか、兵士に目を合わせず、どこかよそよそしい。

「夜は危険ダ」

「わかったよ」

 仕方なく家に戻ろうとしてふと、シレアたちと目が合った。

「おお、怖がらなくてよい。ただの旅人じゃ」

 優しく発したユラウスに体を強ばらせて上目遣いに三人を一瞥する。

 しかしその態度は、異なる人種に対しての警戒とはまた違った感じがした。

 その様子と身長に、

「まだ子どものようですね」

「子どもじゃない。オイラはもう十八歳だ」

 他のリザードマンたちとは違い、明らかによどみのない人語を話している。

「失礼した。彼らから見れば、私も子どもと大差ない。許してやってくれ」